治験の謝礼の税金・確定申告|20万円以下なら申告不要、は間違いです!
治験に参加して負担軽減費(※)を受け取った際、人によっては、「これって確定申告しなきゃいけないのかな」「税金かかるのかな…」と思うかもしれません。
※負担軽減費とは:治験参加に伴って支払われる一定の金銭です。「報酬」や「謝礼」と呼ぶ人もいますが、本来は負担軽減費または協力費といいます。
あなたも治験のボランティア会社のホームページを調べて、確定申告が必要かどうか、税金がかかるかどうかを調べていると思います。しかし、ページによって書いてあることが違ったり、部分的だったりして「本当は何が正しいの?」という状態になっていませんでしょうか?
「年間20万円以下なら申告不要」という説がよく聞かれますが、これは誤りです。
そこで、今回は治験の負担軽減費(協力費・謝礼・報酬)の税金に関して、他の治験関連の会社やモニター関連の会社よりも、圧倒的に詳しく、正確に説明していきます。
目次
治験の負担軽減費(謝礼)は『雑所得』
治験の負担軽減費に税金がかかってくるかどうかを知るために、負担軽減費は税法上どう扱われるのを解説していきます。
まず、所得は次の10種類に分けられます。
利子所得 公社債や預貯金の利子、貸付信託や公社債投信の収益の分配などから生じる所得をいいます。 配当所得 株式の配当、証券投資信託の収益の分配、出資の剰余金の分配などから生じる所得をいいます。 不動産所得 不動産、土地の上に存する権利、船舶、航空機の貸付けなどから生じる所得をいいます。 事業所得 商業・工業・農業・漁業・自由業など、事業から生じる所得をいいます。 給与所得 給料・賞与などの所得をいいます。 退職所得 退職によって受ける所得をいいます。 山林所得 5年を超えて所有していた山林を伐採して売ったり、又は立木のまま売った所得をいいます。 譲渡所得 事業用の固定資産や家庭用の資産などを売った所得をいいます。 一時所得 クイズの賞金や満期保険金などの所得をいいます。 雑所得 年金や恩給などの公的年金等、非営業用貸金の利子、原稿料や印税、講演料などのように、他の9種類の所得のどれにも属さない所得をいいます。
治験の負担軽減費やモニターの謝礼は、このうち、「雑所得」に該当します。
雑所得とは、国税庁のHPによれば以下のように説明されています。
雑所得とは、他の9種類の所得のいずれにも当たらない所得をいい、公的年金等、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金などが該当します。
それでは、雑所得の申告の義務や税金の計算についてどのように変わってくるのか見ていきましょう。
雑所得(謝礼・負担軽減費)の申告について
一部サイトで、「雑所得は20万円を超えなければ申告は必要ない」と記載されていますが、事実とは異なります。あなたの状況によって、雑所得の申告が必要がどうかは異なります。
会社員・非正規雇用・フリーターの場合(給与所得がある場合)
会社員などの給与所得がある人は、次の場合のうちどちらかに該当すると申告が必要です。
(2) 給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える
(3) 給与を2か所以上から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)との合計額が20万円を超える
出典:確定申告が必要な方|国税庁
わかりにくいので、解説すると、
- 給与を1箇所からもらっている場合は、雑所得が20万円を超えなければ申告不要
- 給与を2箇所以上からもらっている場合は、メインではない方の給与+雑所得が20万を超えなければ申告不要
ということです。
例えば、
- 会社員(アルバイト)の給料が300万円+雑所得(謝礼・負担軽減費等)10万円→申告不要
- 会社員(アルバイト)の給料が300万円+副業としてバイト10万円+雑所得(謝礼・負担軽減費等)5万円→申告不要
- 会社員(アルバイト)の給料が300万円+雑所得(謝礼・負担軽減費等)25万円→申告必要
- 会社員(アルバイト)の給料が300万円+副業としてバイト10万円+雑所得(謝礼・負担軽減費等)15万円→申告必要
ということです。他のところから給与をもらっている人は、その給料によっては、雑所得として負担軽減費が20万円を超えていなくても申告が必要です。注意しましょう。
個人事業主の場合
個人事業主が雑所得の申告を必要とするかは、確定申告が必要かどうかによって異なります。確定申告が必要なら雑所得を申告しなければいけないですし、確定申告が不要なら雑所得の申告もいりません。
確定申告が必要かどうかは、所得と経費と所得控除がいくらかによって異なります。個人事業主の税金については、国税庁のHPに以下の通り書かれています。
1 各種の所得の合計額(譲渡所得や山林所得を含む。)から、所得控除を差し引いて、課税される所得金額を求めます。
2 課税される所得金額に所得税の税率を乗じて、所得税額を求めます。
3 所得税額から、配当控除額を差し引きます。
またまたわかりにくいですね。解説します。
本業の所得である事業所得と雑所得を足して、経費を引きます。さらにそこから、所得控除を差し引きます。その結果、プラスになれば申告が必要で、マイナスなら申告は不要です。
例えば、事業所得が60万円で、雑所得が15万円、経費が30万円、所得控除が38万円だった場合は、
となり確定申告が必要です。
一方で、事業所得が40万円で、雑所得が10万円、経費が30万円、所得控除が38万円だった場合は、
となり、確定申告は不要です。
学生の場合(扶養に入っている場合)
学生の場合は、以下の計算をすることで申告が必要かどうか判断できます。(※参考元:学生の給与所得と雑所得と確定申告について – 税理士に無料相談ができるみんなの税務相談 – 税理士ドットコム)
まず、アルバイト等の給与収入から給与所得控除額65万円を引きます。
これが0かマイナスなら、雑所得(負担軽減費)が38万円を超えなければ確定申告は必要ありませんし、親の扶養を外れません。
これがプラスになる場合は、プラスになった分+雑所得が38万円を超えなければ確定申告は必要ありませんし、親の扶養を外れません。
ちょっとわかりにくいと思うので例を出します。
例えば、以下の場合は確定申告は不要です。
例1:給与収入50万円、雑所得30万円の場合
給与収入50万円ー給与所得控除額65万円=ー15万円(マイナス)
雑所得30万円<=38万円なので不要
例2:給与収入70万円、雑所得10万円の場合
給与収入70万円ー給与所得控除額65万円=5万円
5万円+雑所得10万円=15万円<=38万円なので不要
一方で以下の場合は確定申告が必要です。
例3:給与収入50万円、雑所得40万円の場合
給与収入50万円ー給与所得控除額65万円=ー15万円(マイナス)
雑所得40万円>=38万円なので必要
例4:給与収入90万円、雑所得10万円の場合
給与収入90万円ー給与所得控除額65万円=25万円
25万円+雑所得40万円=65万円>=38万円なので必要
雑所得が一定額を超えるかどうかではなく、アルバイトでいくら稼いでいるかによって変わってきますので注意してください。ちなみに、上の計算の通り、雑所得(負担軽減費)が単純に38万円を超える場合は、アルバイトで稼いだ額に関係なく確定申告が必要です。
専業主婦の場合(扶養に入っている場合)
専業主婦の場合は、「雑所得が年間38万円以下」なら申告が必要ありません。基礎控除として、38万円が相殺されて所得0円として扱われるからです。
専業主婦の場合は、「給与」としてもらっている所得がないので、自宅で内職や在宅ワーク・委託契約の仕事などをしているとその所得に「基礎控除38万円」がかかります。このことから専業主婦の収入は38万円以下であれば基礎控除と相殺されて課税所得が0円になります。ですので、給与をもらっていない専業主婦は「所得が38万円以上になったら確定申告必要」となります。
兼業主婦の場合(扶養に入っている場合)
パートをしている兼業主婦の場合、専業主婦とは事情が異なります。「雑所得が年間20万円以下」なら申告は必要ありません。
専業主婦の場合に適用された基礎控除38万円が年末調整で消化されて、雑所得には適用されなくなるからです。
一方、パートなどで「給与」としての所得がある場合は、職場での年末調整で年間の給与に「基礎控除38万円」が消化されてしまいますので、会社員など本業を持って働いている人と同じく副業の収入がある場合はその所得が20万円以上で確定申告が必要になります。これはパートでも正社員でも業務形態は関係なく「給与」をもらっていて年末調整をされている方すべてに当てはまります。つまり、給与をもらっている主婦は「20万円以上の所得で確定申告が必要」ということです。
源泉徴収は不要
治験の負担軽減費やモニターの謝礼に該当する雑所得は源泉徴収されません。公的年金等や原稿料・講演料、金融類似商品の収益等については源泉徴収が行われますが、治験の負担軽減費やモニターの謝礼はそれに含まれせん。
公的年金等や原稿料・講演料などは、原則として支払の際に源泉徴収が行われます。
なお、定期積金の給付補てん金、抵当証券の利息など、いわゆる金融類似商品の収益については、その支払の際に一律20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、地方税5%)の税率で源泉徴収が行われます。これらの所得については、源泉分離課税が適用されますので、確定申告を行うことはできません。(注) 平成25年1月1日から平成49年(2037年)12月31日までの間に生ずる所得については、所得税とともに復興特別所得税が源泉徴収されます。
(所法35、203の2、204、所基通35-1~2、措法41の10、41の14、復興財確法28)
出典:No.1500 雑所得|国税庁
税務署にばれるのか
負担軽減費は手渡しの場合もありますので、申告しなければ「ばれない」と思うかもしれません。
しかし、あなたに負担軽減費を支払った会社なり病院には、支払ったことの履歴が残っています。万一、その会社や病院に税務調査が入れば、あなたが負担軽減費を受けとっていることはばれます。申告義務がある場合は、トラブルを避けるために、必ず申告するようにしてください。
勤務先の会社にばれるのか
負担軽減費や謝礼を受け取った時、「勤務先にはばれるのか」副業禁止の方には気になるのではないでしょうか。結論から言えば、「金額によっては、ばれる可能性がある」ということになります。
そもそも会社に副業がばれるのは、「年末調整時に住民税が不自然に高かった場合」です。住民税は、前年の所得の額によって決まります。つまり、治験の負担軽減費が高額なほど、所得が増して住民税が高くなるのでばれる可能性が高まります。「確定申告をしなければいい」というわけではありません。
もし、心配な人は、会社が住民税を支払う「特別徴収」から、自分で支払う「普通徴収」にすればばれる可能性がかなり少なくなります。ただ、自治体によってはできないこともあるそうなので、自治体に確認をしましょう。
ではどうすれば住民税の額を変化させず、本業の会社に副収入を知られないようにすることができるのでしょうか。
副業で得た収入分の住民税を給料から差し引くのではなく、自分で直接納付するようにしてしまえばよいのです。このような住民税の支払い方法を「普通徴収」といいます。
負担軽減費や謝礼の税金の計算について
負担軽減費や謝礼は雑所得に該当します。雑所得の税金額については、総合課税となるので、給与所得など、他の所得と合計した額に応じて金額が決まります。
雑所得の金額は、給与所得などの他の所得の金額と合計して総所得金額を求めた後、納める税額を計算します。
上の方で申告の必要性について解説しましたが、「申告不要=税金がかからない」という意味ではないので注意しましょう。
まとめ
今回は、治験の負担軽減費の確定申告や、税金に関して説明しました。他の治験関連の会社やモニター関連の会社よりも圧倒的に詳しく、正確に解説しましたので、参考にしてください。
ただ、実際に税金に関してご不明点があれば、弊社は税金の専門家ではないため、別途自治体の窓口や税理士に相談するようにしてください。
- 治験の負担軽減費やモニターの謝礼は、「雑所得」に該当
- 雑所得の申告が必要かどうかは、「会社員」「個人事業主」「学生」「専業主婦」「兼業主婦」等の身分や、受け取った額によって異なる
- 申告の義務がある場合は申告しよう
- 会社にばれたくない場合は住民税を普通徴収にするのが無難
参考にしていただければ幸いです。
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