治験ってどんな薬を試すの?どんな試験の種類があるの?わかりにくい「治験」徹底解説
治験に興味を持って情報収集していくと、「小難しくてよくわからない…」「全体像が見えない」という状態に陥りがちです。
せっかく治験に興味をもっても、一体なんなのか理解が曖昧なままだと参加しようにも怖いですよね。とはいえ、治験は、様々な専門用語が使われるだけあって、なかなかややこしいと感じがちです。
治験に関しての情報を発信している医療機関もありますが、医療機関目線なので、参加する側が知りたいと思った情報が書いてないこともしばしばです。
この記事では、治験やモニターの募集専門会社として、治験の種類にはどんなものがあるのかを解説していきます。この記事で、治験とモニターの違いも理解でき、基本的な知識が網羅できるので、治験やモニターに不安なく参加できるようになると思います。
目次
治験とは何か
「治験に参加してみたい」と思ったとしても、治験ってなんなのか、いまいちわかりにくいですよね。そこで、そもそも治験とはいったいなんなのか解説していきます。
治験の定義(臨床試験との違い)
薬事法によれば、治験の定義は、次のように言えるようです。
臨床試験の試験成績に関する資料の収集を目的とする試験の実施(薬事法第2条第16項)
わかりにくいですね。噛み砕いて説明すると、「新しい治療法の認可を取るために実施される臨床試験」のことです。
また「臨床試験」という新しい言葉がでてきましたね。
この臨床試験とは何かというと、
臨床研究(ヒトまたはヒト試料を用いる医学系研究)のうち、ヒトを対象とした介入研究が臨床試験である
引用:古澤康秀監修(2013年)『医薬品開発入門』株式会社じほう,p.40.
とされています。
要するに、臨床試験は、「新しい治療法(薬や医療機器など)の有効性と安全性をヒトで検証する行為」です。健康食品や化粧品の有効性を確かめるものも、臨床試験に含まれます。臨床研究>臨床試験>治験という関係になっています。
治験は臨床試験に含まれますが、新しい治療法(薬等)を販売するための認可を取るために行うものを、特に「治験」と呼ぶということです。簡単に言い換えると
治験=新しい治療法(薬など)の認可を取るためにヒトを対象として行われる試験。
と言えます。
治験(薬)とモニター(健康食品・化粧品など)の違い
さて、弊社では薬を試す治験の他にも、健康食品や化粧品を試すような試験も募集させていただいています。薬の場合は治験、それ以外の場合はモニターとして区別しています。
健康食品や化粧品の有効性を試すための試験(モニター)は、臨床試験に含まれます。治験ではありません。
薬は、認可を得なければ販売できませんが、健康食品や化粧品は、認可を得なくても販売自体はできます。「〜に効きます!」という表現ができないだけです。これが、薬と、健康食品や化粧品との違いです。
一緒くたにして、薬も健康食品も化粧品も全て「治験」と呼ばれる場合もありますが、それは間違いです。
市販後試験(第Ⅳ相試験)
薬を販売するようになってから、追加調査を行うこともあります。
このような調査を「市販後試験」「製造販売後試験」といいます。ちなみに、すでに市販されているため、認可を取るためのものではないので厳密には治験ではありません。
市販後試験は、長期に薬を使用した時の有効性や安全性を確かめるためのものです。「販売したら終わり」というわけではなく、製薬メーカーは継続して調査をする責任を追っているわけです。
治験で試す薬の種類
治験で試す薬の種類にはどんなものがあるのでしょうか。具体的なことは、秘密保持の義務があるので申し上げられませんが、概要を解説させていただきます。
新薬(先発医薬品)
治験は、ヒトにとっていい効果があると期待された候補物質を、薬として販売の認可を取るために行われます。その候補物質が、まだこの世に薬として出ていない場合は、その薬は新薬あるいは先発医薬品と呼ばれます。
ひとくちに薬といっても、その分類の仕方や、形状によって様々なものに分けられます。
医療用医薬品と一般用医薬品
医薬品は、医師によって処方される医療用医薬品と、薬局等で買うことができる一般用医薬品に分けられます。
医療用医薬品から一般用医薬品に変更するために、治験が行われることもあります。
薬の形状別
薬の形状も様々なものがあります。
錠剤、散剤(粉薬)、顆粒剤、液剤、坐薬、塗り薬、吸入剤、注射剤、湿布薬などの貼り薬や点眼薬など、様々なものがあります。疾患によって、適切な形状が異なりますから、試験ごとに異なります。
実際、モニコムで募集した試験でも、薬の形状については様々なものがありました。
治療効果別
この世には膨大な数の薬が存在するように、治験薬も治療効果別に様々な種類があります。生活習慣病のような命に関わる疾患を治療するものもあれば、頻尿やひざ関節痛を緩和するようなQOL(生活の質)を向上させるためのものもあります。また、多発性硬化症のような難病や、ガンを治療するためのものもあります。
募集会社を通してボランティアさんに協力してもらう場合は、難病やガンについての試験はほとんどありません。むしろ、生活習慣病や頻尿などの薬を試すケースがおおいです。
ジェネリック医薬品(後発医薬品)
「ジェネリックにしましょうか?」そんな風に薬局に行った際、聞かれたことはありませんか?
ジェネリック医薬品は、後発医薬品とも呼ばれます。その名の通り、すでに市販されている医薬品である先発医薬品の後を追って開発される薬です。先発医薬品と成分が同じなので、期待される効能も同じと考えられています。
治験では、このようなジェネリック医薬品を対象とした試験も行われます。ジェネリック医薬品は先発医薬品と効能が同じと考えられているので、成分が同等であることを示せばよく、新薬よりも必要な試験数が少なくなります。
治験の種類
治験には、様々な種類があります。タイプによっていくつかに分類できるので、分類分けしながら解説していきます。
段階(フェーズ)から分けた場合
治験は、段階を経て進行していきます。治験は段階別に大きく次の3種類に分けられます。
第Ⅰ相試験(代表的な試験:臨床薬理試験)
まず、一番最初にやるのが第Ⅰ相試験です。医薬品になり得る候補物質を初めてヒトで試す段階です。
主に、「臨床薬理試験」という、薬の忍容性や薬物動態を調べる試験を行います。忍容性とは、副作用のがどの程度出るかという度合いのことです。薬物動態とは、体内での成分の動き方のことです。
つまり、第Ⅰ相試験では、治療効果を確かめるためのものではありません。
主に、健康な成人男性のボランティアを被験者として実施されます。ただし、がん治療薬などの毒性の強い治験薬の場合は、患者を対象として行われることもあります。
第Ⅱ相試験(代表的な試験:探索的試験)
次に行うのが、第Ⅱ相試験です。
第Ⅱ相試験では、適切な用法・用量を決めるために行う探索的試験を主に行います。
この試験では、主に、患者をボランティアとして実施されます。つまり、頻尿に関する薬なら、頻尿の人にボランティアとして参加してもらいます。
比較的少人数のボランティアに協力いただく試験です。通常、無作為化二重盲検(並行)群間比較試験法で行われます。有効成分の入ったものを試すグループと、入ってないものを試すグループに別れて、医者も本人もどちらのグループかわからないようにして実施されます。
前期と後期に別れるのが一般的で、前期より後期で多くのボランティアにご協力いただきます。
第Ⅲ相試験(代表的な試験:検証的試験)
第Ⅲ相試験では、有効性や安全性を証明・確認するための試験(検証的試験)を行います。薬の発売前の最終段階です。
有効性を調べるものなので、患者を対象として実施されます。第Ⅱ相試験で決めた用法用量で、数百人規模の多くのボランティアに治験薬を試してもらいます。
スケジュールで分けた場合
治験は、治験薬の性質上、参加するスケジュール感が様々です。大きく分けると、通院する試験と、入院する試験があります。もちろん例外もありますが、治験の理解を深めるために役にたつと思いますので参考にしてください。
通院する試験
医療機関に一定期間ごとに通院してもらう試験です。治験薬によって様々で、1ヶ月程度で終わるものもあれば、数年間実施するものもあります。
主に、通院の試験は、第Ⅱ相試験、第Ⅲ相試験で実施されます。治験薬の有効性や安全性を確かめるものなので、一定期間ごとに医療機関に訪問して健康状態を確認します。そのため、通院試験は、症状がある方を対象とするものがほとんどです。あまり健常な人を対象としては行われません。
負担軽減費(協力費)としては、来院ごとに1万円程度が支払われるものが多いです。
入院する試験
医療機関に数日間、宿泊していただく試験です。
主に第Ⅰ相試験(臨床薬理試験)が入院の試験となります。入院する理由は、継続的に健康診断をして、薬が体内でどのような動きをするかを調べるためです。通院だと期間が空きすぎてしまうので、入院して調べるのです。
入院の試験は、主に健常な男性を対象として実施されます。症状がある人や女性を対象とした入院の試験もありますが、稀です。
3泊4日を2回、4泊5日を1回などといったスケジュール感で実施されます。何日か通院がある場合もあります。
ボランティアにとって負担が大きいので、負担軽減費(協力費)が大きくなりがちです。例えば、4泊5日を2回の試験であれば、10〜15万円の負担軽減費(協力費)になります。
同等性試験
「ジェネリック医薬品」をご存知でしょうか?
ジェネリック医薬品(後発医薬品)とは、新薬(先発医薬品)と同じ有効成分を使った薬です。成分が同じなので、効能や安全性が同等と見なされます。
新薬(先発医薬品)は第Ⅰ相〜第Ⅲ相試験まで実施して有効性と安全性を確かめないといけません。しかし、ジェネリック医薬品の場合は、新薬(先発医薬品)と同等であることだけを確かめればいいので、開発にかかる時間と費用が圧倒的に少なくなります。
実施される治験の中には、こうしたジェネリック医薬品の試験も多く含まれます。主に第Ⅰ相のような薬物動態を確かめる試験が実施されます。
治験のトレンド
治験はまだ対応されていない疾患に対しての薬を開発するために行われます。薬がすでに開発されきっている疾患に対しては治験はあまり行われません。開発してもあまり売上にならないからです。
例えば、すでに多くの薬が販売されている高血圧や高コレステロールなどの治験は、今では下火です。逆に、アトピーや小児向けの疾患については多くなってきています。
このように、治験には流行り(トレンド)があります。
困っている人が多いものの、まだ有効な治療法がない人の医療ニーズを、『アンメット・メディカルニーズ』といいます。
具体的には、アトピー、認知症、不眠症、片頭痛やガンなど、有効な治療法がなく開発が強く望まれている医療ニーズが、アンメットメディカルニーズです。今では、このアンメットメディカルニーズが注目され、この分野の治験が多くなってきています。
アンメットメディカルニーズのうち、患者数が5万人未満の希少疾患についての薬を『オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)』といいます。
オーファンドラッグは以下に当てはまるものだと定義されています。(薬事法第77条の2)
1)国内の対象患者数が5万人未満である。
2)医療上特にその必要性が高い
3)開発の可能性が高い引用:古澤康秀監修(2013年)『医薬品開発入門』株式会社じほう,p.40.
これまでに開発されたオーファンドラッグとしては、グラチラマー酢酸塩(多発性硬化症)、ミジスマーゼ(特発性肺線維症)、KW-0761(白血病リンパ腫)などがあります。
オーファンドラッグの開発は、これまでは採算が見込めないので先送りされてきました。ただ、助成金が出るなど制度が改められたので、こうしたオーファンドラッグについても治験が進められるようになってきました。
まとめ
今回は、治験にはどんな種類のものがあるのか解説しました。
いざ、治験に参加しようと思っても、一体治験ってなんなのか理解しないまま参加するのは怖いですよね。
専門的なことも解説したので難しいかも知れませんが、これを読んでなんとなくでも治験の全体像がわかるようになってみてください。
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