「機能性表示食品の試験モニターに参加してみたい」——そう思ったことはないだろうか。スーパーやドラッグストアで「お腹の調子を整える」「脂肪や糖の吸収を抑える」などの表示がある食品は、消費者庁への届出の際に科学的根拠を提出する必要がある。その根拠を集めるために実施されるのが食品臨床試験であり、そのモニターとして一般の人が参加できる。医薬品の治験と比べてハードルが低く、日常生活をほぼ維持しながら謝礼を得られる点が特徴だ。この記事では、機能性表示食品の試験への参加条件と流れを具体的に解説する。
機能性表示食品の試験とは何か
まず制度の背景を整理しておこう。「機能性表示食品」とは、科学的根拠に基づいて特定の機能(健康効果)をパッケージに表示できる食品の区分だ。特定保健用食品(トクホ)が消費者庁の個別許可制であるのに対し、機能性表示食品は事業者が届出を行うだけでよい。ただし、その届出には「科学的根拠」の提示が必須だ。
この科学的根拠として最も信頼性が高いとされるのが、「RCT(ランダム化比較試験)」だ。消費者庁のガイドラインでは、最終製品を用いたRCT——特に二重盲検プラセボ対照試験——が推奨されている。この試験を実施するために、食品メーカーは一般の参加者(モニター)を募集する。
医薬品の治験とどう違うのか
同じ「臨床試験」でも、医薬品の治験と食品の試験は性質が異なる。医薬品治験はGCP(医薬品の臨床試験の実施の基準)に基づく厳格な規制下に置かれるが、食品臨床試験は食品表示法・消費者庁のガイドラインが根拠となる。規制の重さが違うぶん、参加者への侵襲性(体への負担)も低く、入院が必要なケースはほぼない。
試験期間中も日常生活をそのまま続けながら参加できるのが大きな特徴で、「月に1〜2回通院して、あとは自宅でサプリを飲んで日誌をつけるだけ」という参加者の体験談もある。
試験で評価される機能の例
- 体脂肪・内臓脂肪の低減(BMI・体重変化を測定)
- 血糖値・血圧の改善(血液検査・血圧測定)
- 腸内環境・便通の改善(排便日誌・アンケート)
- 睡眠の質・目の疲れ・認知機能など(問診・アンケート形式)
参加条件:試験ごとに異なるが基本パターンがある
機能性表示食品の試験への参加条件は、試験が評価しようとする機能によって変わる。ただし、共通して求められる基本条件がある。
基本的な参加条件
- 年齢:20〜65歳程度(試験によって異なる。シニア向け機能の試験は40代以上を対象とすることも)
- 健康状態:現在治療中の疾患がない健常者が基本対象
- 服薬:試験の評価に影響する薬・サプリを服用していないこと
- 妊娠・授乳:妊娠中・授乳中は原則除外
- 食物アレルギー:試験食品の成分へのアレルギーがないこと
試験機能によって追加される条件
脂肪・体重に関する試験ではBMI(体格指数)に条件が設けられることが多い。たとえば「BMI 22〜28」「BMI 25以上30未満」といった中性脂肪・体重がやや気になる人を対象とする設定が一般的だ。血圧に関する試験では「収縮期血圧が130〜160mmHg」など、気になるが投薬治療には至っていない範囲の人を対象とするケースが多い。
逆に言えば、完全に標準値の人より「少し気になる数値がある健常者」の方が対象に当てはまりやすいという特徴がある。これは試験が「その機能の改善効果」を見るために、改善の余地がある参加者を必要とするからだ。
試験期間中の制限事項
試験参加中は以下のような制限が設けられることが多い。
- 試験食品と同成分のサプリメント・食品の摂取禁止
- 激しい運動・食事内容の急激な変化の制限
- 試験期間中の新規サプリメント開始禁止
- アルコール摂取量の記録(制限される場合もあり)
参加までの流れ:5つのステップ
機能性表示食品の試験に参加するには、専門機関への事前登録が必要だ。流れを順に見ていこう。
ステップ1:モニター登録
食品臨床試験を実施するCRO(臨床試験受託機関)や専門機関のウェブサイトからモニター登録を行う。氏名・年齢・健康状態・居住地などの基本情報を登録し、試験の案内を受け取れるようにする。登録自体は無料だ。
主要な登録先には、生活向上WEB、総合医科学研究所(soiken.info)、モニタン、協和トライアルなどがある。複数の機関に登録しておくと、希望の条件に合った試験に参加しやすくなる。
ステップ2:試験案内の受信と応募
登録後、条件に合致すると見られる試験の案内がメールなどで届く。案内には試験の目的・期間・来院日程・謝礼額・参加条件などが記載されている。内容を確認して参加を希望する場合は、期日内に応募する。
ステップ3:スクリーニング検査(事前検査)
応募後、試験施設での事前検査(スクリーニング)が行われる。検査内容は身長・体重・血圧・採血・採尿・問診などで、所要時間は1〜3時間程度だ。この検査で参加基準を満たしているかどうかが判定される。スクリーニングに参加するだけで3,000〜7,000円程度の謝礼が支給されることが多い。
ステップ4:本試験への参加
スクリーニングを通過した参加者が本試験に進む。本試験では試験食品(サプリメント・飲料・食品など)を毎日決められた方法で摂取し、食事・体調・排便などを日誌(ダイアリー)に記録する。来院は月1〜2回程度で、そのたびに採血・問診などの検査が行われる。試験期間は1ヶ月〜6ヶ月程度が一般的だ。
ステップ5:試験終了・謝礼受け取り
全工程を終了すると謝礼(協力費)が支払われる。過去の実績では30,000〜210,000円という幅がある。試験の期間・来院回数・拘束時間によって金額が変わるため、応募前に謝礼額を確認しておこう。
プラセボ(偽薬)が含まれる試験について
機能性表示食品のRCTでは、プラセボ(有効成分を含まないダミー)を使用する「二重盲検試験」が推奨されている。参加者は試験期間中、自分が本物の試験食品を摂取しているのか、プラセボを摂取しているのかを知らされない。
「プラセボに当たったら意味がないのでは?」と感じる人もいるかもしれないが、試験終了後には結果の説明を受けることが多い。また、プラセボ群であっても試験参加の謝礼は同額支給されるのが一般的だ。試験科学への貢献という観点から見れば、プラセボ群も重要な役割を担っている。
参加前に確認すべきポイント
機能性表示食品の試験は比較的参加しやすいとはいえ、事前に確認しておくべき点がある。
試験施設へのアクセス
月1〜2回の来院が必要なため、試験施設の場所は事前に確認しよう。交通費支給の有無も施設によって異なる。自宅や職場から1時間以内でアクセスできる施設かどうかが、6ヶ月間の参加を続けられるかどうかの現実的な判断基準になる。
試験食品の摂取方法
毎朝決まった時間にサプリを飲む、毎食前に飲料を摂取するなど、摂取方法が定められている。生活リズムが不規則な人は、摂取忘れが試験データに影響するため注意が必要だ。摂取タイミングが厳格に決まっている試験か、ある程度柔軟に対応できる試験かを確認しておこう。
体調変化時の対応
試験期間中に体調変化を感じた場合は、すぐに担当者に連絡する。食品試験は医薬品治験ほどの副作用リスクは低いが、アレルギーや消化器症状が現れることは皆無ではない。担当のCRC(臨床試験コーディネーター)に相談できる体制が整っているかを確認しておくと安心だ。
まとめ:機能性表示食品の試験は「日常生活型」の参加が可能
機能性表示食品の臨床試験は、入院を必要とせず日常生活を続けながら参加できる点が最大の特徴だ。試験期間が1〜6ヶ月と長めであることが負担に感じられることもあるが、月1〜2回の来院と自宅での日誌記録が主な義務なため、仕事や学業との両立もしやすい。
- 参加にはCROや専門機関へのモニター登録が必要
- スクリーニング検査で基準を満たすと本試験に進める
- 試験期間は1〜6ヶ月、来院は月1〜2回程度
- 謝礼は30,000〜210,000円(過去実績)
- 「少し数値が気になる健常者」が対象になりやすい試験もある
まずは複数の登録機関に会員登録をして、自分の健康状態に合う試験の案内を待つところから始めよう。希望条件に合致する試験が見つかった時に動けるよう、基本的な自分の健康データ(血圧・体重・BMIなど)を把握しておくと、応募時に迷わずに済む。
