「治験に応募したいけど、自分の体の数値で参加できるかどうか不安」という声は多い。特に40代以降は、健康診断で「要観察」「要精密検査」などの結果を受け取った経験がある人も増える。では実際のところ、どの数値がどの水準であれば治験のスクリーニングを通過できる可能性があるのか。
この記事では、治験の参加条件として頻繁に設定されるBMI・血圧・コレステロール・肝機能・血糖の各検査値について、一般的な正常範囲と治験で使われる除外基準の目安を解説する。ただし基準値は試験ごとに異なるため、「この数値ならどの試験も通過できる」という保証はできない。あくまで目安として参考にしてほしい。
BMI:治験で最も頻繁に設定される条件
BMIの計算方法と正常範囲
BMI(Body Mass Index)は、体重(kg)を身長(m)の二乗で割った値だ。計算式はシンプルで、身長170cm・体重65kgの人のBMIは65÷1.70÷1.70≒22.5になる。
日本肥満学会の基準では、BMI 18.5未満が「低体重」、18.5〜24.9が「普通体重」、25.0〜29.9が「肥満(1度)」、30.0以上が「肥満(2度以上)」とされている。
治験参加条件でのBMI設定
「健康な成人」を対象とした治験では、BMI 18.5〜30.0(または18.5〜29.9)の範囲が参加条件として設定されることが多い。この範囲の外——つまり著しく低体重または肥満——の場合は、薬の代謝や体内分布に影響する可能性があるため除外される。
一方、生活習慣病・肥満をテーマにした試験では、BMI 25以上・30以上などを参加条件とする場合もある。自分のBMIが高めだから治験に縁がないと思っている人は、肥満症関連の試験を探してみると合致するケースがある。
血圧:スクリーニングで最も落とされやすい項目
血圧の正常値と高血圧の基準
血圧の理想的な値は収縮期(上)120mmHg未満、拡張期(下)80mmHg未満とされる。収縮期130〜139mmHgは「高値血圧」(高血圧予備軍)、収縮期140mmHg以上・拡張期90mmHg以上が「高血圧」に分類される(日本高血圧学会ガイドライン)。
治験での血圧除外基準
治験の参加条件として「収縮期140mmHg未満、拡張期90mmHg未満」が一般的だ。つまり、高血圧と診断される手前の「高値血圧(130〜139mmHg)」の人は、日常生活では問題のない範囲でも治験では参加できない場合がある。
血圧は当日の緊張・睡眠不足・直前のカフェイン摂取・塩分の多い食事などで一時的に上昇する。スクリーニング当日は、十分な睡眠を取り、施設での待ち時間に体を落ち着かせてから測定に臨むことが合否に影響することもある。施設によっては2〜3回測定した平均値を採用するため、「最初の1回が高かった」だけで不合格にはならない場合もある。
なお、降圧薬で血圧をコントロールしている場合、「薬で管理されている高血圧がある」として除外される試験が多い。薬で数値が正常範囲内でも、服薬歴の問診で除外されることがある点は覚えておく必要がある。
コレステロール:LDL・HDL・中性脂肪の基準を理解する
LDLコレステロール(悪玉)
LDLコレステロールの基準値は人間ドック基準で60〜119mg/dL(施設・年齢・性別によって異なる)。受診勧奨の目安は180mg/dL以上だ。治験では「LDLコレステロール ≥180mg/dLの方は除外」や「脂質異常症で治療中の方は除外」という形で条件が設定される場合が多い。
HDLコレステロール(善玉)・中性脂肪
HDLコレステロールは40mg/dL以上が基準で、低すぎると動脈硬化リスクが高まる。中性脂肪(TG)は空腹時で150mg/dL未満が正常範囲とされる(前日の食事・アルコールで大きく変動する)。
中性脂肪は食後や飲酒翌日に大幅に上昇するため、スクリーニング前日のアルコール・過食は避けた方がいい。採血は通常、空腹時(前夜0時から絶食)で実施される。
肝機能(AST・ALT・γGTP):飲酒の影響が出やすい項目
各指標の基準値と意味
AST(GOT)・ALT(GPT)は肝臓の細胞内にある酵素で、肝細胞が障害を受けると血液中に漏れ出して数値が上昇する。正常値はASTが10〜30 U/L、ALTが10〜30 U/L程度(施設によって多少異なる)。γGTPは男性で50 U/L以下、女性で30 U/L以下が一般的な基準だ。
アルコールはγGTPを特に上昇させる。日頃から飲酒量が多い人は、スクリーニング前1週間程度の節酒が数値改善に有効な場合がある。ただし、慢性的な肝機能障害(脂肪肝・肝炎等)がある場合は、節酒だけでは改善しない。
治験での肝機能除外基準
治験では「AST・ALTが基準値上限の1.5倍以上(例:45 U/L以上)」や「γGTPが基準値上限の2倍以上」などを除外基準に設定する試験が多い。試験薬が肝臓で代謝される場合、肝機能が低下していると薬の代謝が正常に行われないためだ。
血糖・HbA1c:糖尿病の有無を確認する
空腹時血糖とHbA1cの基準値
空腹時血糖の正常範囲は70〜99mg/dL。100〜125mg/dLが「境界型(糖尿病予備群)」、126mg/dL以上が糖尿病の疑いとなる。HbA1cは過去1〜2ヶ月の平均的な血糖状態を示す指標で、正常値は4.6〜6.2%(5.6〜6.4%が要注意域)。HbA1c 6.5%以上かつ空腹時血糖126mg/dL以上が糖尿病の診断基準の目安だ。
治験での血糖除外基準
「健康な成人」を対象とした治験では「HbA1c ≥6.5%」または「糖尿病の既往・治療中の方は除外」という条件が設定されることが多い。一方、糖尿病・メタボリックシンドロームをテーマとした治験では、高血糖の人が参加条件になる場合もある。
腎機能(クレアチニン):薬の排泄に直結する指標
クレアチニンの基準値
クレアチニンは筋肉の老廃物で、腎臓が正常に機能していれば尿中に排泄される。血液中のクレアチニン値が上昇している場合は腎臓の機能低下を示す。正常値の目安は男性0.65〜1.07 mg/dL、女性0.46〜0.79 mg/dL。男性で1.30 mg/dL以上、女性で1.00 mg/dL以上は異常値とされる。
多くの試験薬は腎臓から排泄されるため、腎機能が低下していると薬が体内に長く蓄積して副作用が出やすくなる。治験では「クレアチニンが基準値上限の1.5倍以上の方は除外」という条件が設定される場合が多い。
まとめ:スクリーニングに向けて知っておくべきこと
治験スクリーニングで問われる主な数値は、BMI・血圧・コレステロール・肝機能・血糖・腎機能だ。一般的な目安として「普通体重(BMI 18.5〜25)・血圧正常(収縮期140mmHg未満)・肝機能正常・糖尿病なし・腎機能正常」であれば、健康な成人を対象とした多くの試験で参加可能な状態にある。
しかし血圧・中性脂肪・肝機能は生活習慣で短期間に変動する指標だ。スクリーニング前1週間の節酒、当日の十分な睡眠・カフェイン制限といった準備が、合否に影響することもある。
「自分の数値が基準内かどうかわからない」という場合は、まず年に1度の健康診断の結果票を引っ張り出して確認するところから始めてみよう。モニコムの案件詳細には参加条件(BMI範囲・喫煙可否等)が記載されているため、自分の状況に合う案件を探す際の参考にしてほしい。
