「腰が痛くて整形外科に通っているが、なかなか改善しない」「膝の痛みで生活に支障が出ている」――そんな状況にある人の中に、整形外科系の臨床試験への参加を考える人は少なくない。特定の疾患を持っていることが参加の「条件」になるため、日常の痛みを抱えながらも新しい治療法の開発に貢献できる可能性がある。
この記事では、腰痛・変形性膝関節症を対象とした整形外科系の治験・臨床試験について、参加条件・試験期間・痛みの評価方法・注意点を解説する。
整形外科系治験の対象疾患
整形外科系の臨床試験で主に対象となる疾患は、慢性的な痛みを抱える疾患だ。代表的なものを挙げると以下になる。
- 変形性膝関節症(OA:Osteoarthritis):膝関節の軟骨がすり減って起きる痛みと機能障害
- 慢性腰痛(CLBP:Chronic Low Back Pain):3ヶ月以上続く腰痛
- 変形性股関節症
- 肩関節周囲炎(五十肩)
- 骨粗鬆症(骨折リスク低減薬の試験)
- リウマチ性関節炎(整形外科・リウマチ内科領域の境界)
中でも変形性膝関節症と慢性腰痛は患者数が非常に多く(日本では膝OAの推定患者数が約2,500万人)、製薬会社が積極的に新薬開発を進めている分野だ。治験の募集案件も比較的多い。
参加条件の一般的な基準
整形外科系治験の参加条件は試験によって異なるが、共通して求められる要素がある。
痛みのスコアによる選定
整形外科系試験では、痛みの強さをスコアで定量評価し、参加適格性を判定する。代表的な評価方法が以下の二つだ。
VAS(Visual Analogue Scale)は、10cmの線の左端を「痛みなし」、右端を「想像できる最大の痛み」として、現在の痛みを指し示す方法だ。NRS(Numerical Rating Scale)は、0(痛みなし)から10(最大の痛み)の11段階で数字を選ぶ方法だ。両者を組み合わせることも多い。
例えば「VASスコア40mm以上(中等度以上の痛み)」が参加条件の一つになっているケースが多い。痛みが軽すぎても、重すぎても(例外的な処置が必要なほどの重症では)対象外になることがある。
変形性膝関節症の一般的な参加条件
- 年齢:40〜80歳程度(高齢者中心)
- X線検査(レントゲン)でOAの骨変化が確認できること
- Kellgren-Lawrence分類(KL分類)でグレード2〜3(軽度〜中等度)
- 一定期間(例:6ヶ月以上)症状が続いていること
- NRS3〜7程度の慢性的な痛みがあること
慢性腰痛の一般的な参加条件
- 腰痛の継続期間:3ヶ月以上(慢性腰痛の定義)
- 特定の原因疾患がない非特異的腰痛(がん性疼痛・骨折後の疼痛は除外)
- 既存の鎮痛薬で十分な効果が得られていない状態
- 下肢への神経症状(しびれ・麻痺)が強くない状態
除外基準――参加できない可能性がある条件
整形外科系治験の主な除外基準
- 直近6ヶ月以内の関節内注射(ステロイド・ヒアルロン酸)実施
- 関節手術(人工関節置換術含む)の既往
- 関節リウマチ・痛風・感染性関節炎など他の関節疾患の診断
- 重篤な腎臓・肝臓・心臓疾患の合併
- NSAIDs(イブプロフェン・ロキソプロフェン等)に対するアレルギー
- 妊娠・授乳中
- 試験薬のウォッシュアウト期間が満たされていない(他の鎮痛薬使用中)
特に「直近の関節内注射」は多くの試験で除外基準になる。ヒアルロン酸注射を受けた後に治験への参加を考えている場合、注射から6ヶ月以上経過していることが条件になる試験が多い。
試験期間と通院スケジュール
整形外科系の治験は、慢性疾患を対象としているため試験期間が比較的長い傾向がある。
- 短期試験(鎮痛効果の確認):8〜12週間、4〜6回通院
- 中期試験(機能改善の評価):24〜52週間、6〜12回通院
- 長期安全性試験:1〜2年以上
通院ごとに痛みスコアの評価・関節機能評価(歩行距離・屈曲角度)・採血・X線撮影などが行われる。各回の所要時間は1〜2時間程度が多い。
試験中の生活制限と注意点
鎮痛薬の使用制限
試験薬以外の鎮痛薬(NSAIDs・アセトアミノフェン等)の使用が原則禁止または制限される。ただし、痛みが特に強い場合のレスキュー薬(緊急時の鎮痛薬)が少量許可されることが多い。その使用量は記録として残し、試験データに含められる。
運動・理学療法の制限
試験期間中に新たな運動療法・リハビリを開始することは禁止されるケースが多い。ただし、既に行っているリハビリや軽いウォーキングは継続が認められることが多い。試験前に確認が必要だ。
参加のメリット
整形外科系の治験に参加することの主なメリットは以下の通りだ。
- 最新の治療薬・治療法を試す機会を得られる(プラセボ群になる可能性もある)
- 試験期間中は整形外科専門医が定期的に状態を評価してくれる
- X線・MRI・血液検査など詳細な検査が受けられる(無償)
- 謝礼を受け取りながら、自分の痛みの改善に寄与する可能性がある
まとめ:腰痛・膝の痛みを抱える人は「自分の病気を対象にした試験」を探してみよう
整形外科系の治験は、腰痛や膝の痛みを日常的に抱えている人にとって、最新治療を試しながら謝礼を得られる選択肢だ。痛みのスコア(VAS・NRS)による評価や、関節注射の使用歴など、参加条件が細かく規定されているため、事前に自分の状況を整理した上で応募することが大切だ。
現在かかりつけの整形外科医に通院中の場合は、「こういう試験があるが参加できそうか」と相談してみると、より具体的なアドバイスが得られる。モニコムの案件一覧で「整形外科・関節・腰痛」系の案件を確認してみてほしい。
