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治験の基礎知識

複数の治験に同時参加はできる?ルールと注意点

2025.05.02 読了時間:約5分

「治験を複数同時に受けたらもっと稼げる」――そう考えたことがある人もいるだろう。結論から言えば、複数の治験への同時参加はルール上禁止されており、実際に管理する仕組みも整っている。「バレなければいい」という考えは、自分の安全を脅かすだけでなく、試験データを根本から台無しにするリスクがある。

この記事では、複数の治験に同時参加できない理由・被験者照合システムの仕組み・ルール違反のリスク・複数参加したい場合の正しいやり方を解説する。

なぜ複数の治験に同時参加できないのか

複数の治験への同時参加(掛け持ち)が禁止される理由は、大きく二つある。

理由①:参加者の安全上のリスク

二つの試験薬を同時に体内で処理することは、設計されていない状況だ。それぞれの試験薬の相互作用が研究されていない以上、予期しない副作用が起きても対処のしようがない。

例えば、試験薬Aが試験薬Bの代謝を阻害し、試験薬Bの血中濃度が想定の数倍に跳ね上がる可能性がある。この状態で起きた副作用は、試験薬B単独の問題なのか、Aとの相互作用の問題なのか、区別できない。被験者本人が最大の被害者になる。

理由②:試験データの科学的な信頼性が崩れる

治験の目的は、試験薬の効果と安全性を「正確に」評価することだ。複数の試験薬が体内に存在する状態では、どの試験薬が何に作用したのか判別できなくなる。これにより試験データが無効になり、製薬会社・医療機関・将来の患者にとって損失になる。

治験に参加すること自体が「社会貢献」と言われる所以は、信頼性の高いデータを提供することにある。複数参加による掛け持ちはその前提を壊す行為だ。

被験者照合システム――「バレない」は存在しない

「複数の施設に別々に登録すれば分からないのでは」と考える人がいるかもしれないが、それは現実的に難しい。

日本の主要な治験施設が加盟する「臨床試験受託事業協会(臨試協)」は、「被験者照合システム」を運用している。このシステムに参加者の氏名・生年月日・参加日などが登録され、加盟施設間で照合される仕組みだ。スクリーニング時にこの照合が行われるため、前回参加から十分な間隔が開いていない場合、または現在別の試験に参加中の場合は検出される。

2020年のデータでは、この照合システムで二重登録(複数試験の掛け持ち・ウォッシュアウト期間違反)が発覚した件数は年間1,086件に上る。この数字は、照合システムが機能していることを示している。

違反が発覚した場合のリスク

  • 試験からの即座の除外(謝礼は部分的にしか支払われない場合も)
  • その施設での将来の参加資格の剥奪
  • 照合システム加盟施設全体でのブラックリスト登録(施設により対応は異なる)
  • 当該試験のデータが無効として処理される可能性

「複数参加」の正しいやり方:順番に参加する

複数の治験に「同時に」参加することは禁止されているが、「順番に」参加することは全く問題ない。むしろ、ウォッシュアウト期間を適切に守りながら複数の試験に順次参加する「リピーター参加者」は、各施設にとって歓迎される存在だ。

種類を組み合わせてスケジュールを組む

参加間隔を上手に計画することで、年間を通じて複数の試験に参加できる。ポイントは「種類によってウォッシュアウト期間が異なる」という点だ。

  • 医薬品治験:終了後3〜4ヶ月は次の医薬品治験に参加できない
  • 食品試験・コスメモニター:約1ヶ月程度で次の試験に参加できることが多い
  • 医薬品治験終了後1〜2ヶ月目に食品試験を入れる:試験の種類によっては可能(各試験の規定を要確認)

ただし、食品試験終了後にすぐ医薬品治験に参加できるかは、それぞれの試験のプロトコルによる。「食品試験なら何でも即参加可能」と決めつけず、次の試験のスクリーニング申し込み前に確認することが必要だ。

前回参加を正直に申告することの重要性

スクリーニング時の問診では、前回の治験参加日・試験名・施設名を聞かれる。ここで正確に申告することが、その後のスムーズな参加につながる。申告した内容と照合システムのデータが一致することで、施設側の信頼も得られる。

よくある疑問Q&A

Q:食品試験とコスメモニターの同時参加はどうか

A:食品試験とコスメモニターが対象部位・使用方法で重複しない場合、同時参加が可能なケースがある。ただし、各試験の参加条件に「他の試験への同時参加禁止」と明記されている場合はNGだ。申し込み前に各試験の規定を必ず確認してほしい。

Q:別の県の施設なら照合されないのではないか

A:臨試協の被験者照合システムは全国の加盟施設で共有されているため、地域は関係ない。東京の施設での参加情報は、大阪の施設のスクリーニングでも参照される。

Q:同じ施設で続けて別の試験に参加するのはどうか

A:同一施設であっても、前の試験のウォッシュアウト期間を守れば参加できる。施設側も参加者の参加歴を把握しているため、「前回の参加からの間隔が十分か」を確認した上で次の試験を案内してくれることが多い。

まとめ:同時参加は禁止・順番参加が正しいやり方

治験への複数同時参加は、参加者の安全と試験の信頼性を守るため、GCPのルールとして禁止されている。被験者照合システムにより、複数施設への登録も検出される仕組みが整っている。

「もっと多く稼ぎたい」なら、ウォッシュアウト期間を守りながら順番に参加する計画を立てることが正解だ。種類を組み合わせ、スケジュールを管理することで、年間を通じて複数の試験に安全に参加できる。まずはモニコムで自分の状況に合った試験を探して、最初の一歩を踏み出してほしい。

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