「持病があるけど、治験に参加する前に先生に相談した方がいい?」「薬を飲んでいるんだけど、黙ってても大丈夫かな」――こんな疑問を持ちながら、踏み出せずにいる人は多い。答えを先に言うと、持病・服用薬がある人は相談が必要で、健康な人なら必ずしも必要ではない。ただ、どちらにしても治験担当医師のスクリーニングを通じて確認が行われるため、「黙っておく」という選択肢は存在しない。
この記事では、治験参加前に医師への相談が必要なケース・不要なケースを整理し、相談時に伝えるべき確認事項をまとめる。持病や服用薬があって治験に興味を持っている人は、ぜひ参考にしてほしい。
治験にはかかりつけ医への相談が「義務」ではない
まず前提を整理しよう。治験参加にあたって「かかりつけ医の承諾を得ること」はGCP(Good Clinical Practice:医薬品臨床試験実施基準)で義務化されているわけではない。参加の意思決定はあくまで被験者本人に委ねられており、GCP第52条でも「被験者は自由な意思によって治験に参加できる」とされている。
ただし、治験施設の担当医師(治験責任医師・治験分担医師)がスクリーニング時に被験者の健康状態を確認する義務は担っている。そのため「服用薬を申告しない」「持病を隠す」という行為は、参加後に発覚すると即座に試験中止・謝礼の部分没収という事態になりかねない。正直な申告が前提だ。
「治験参加カード」を知っていますか
治験参加が決まると、多くの施設で「治験参加カード」が渡される。これは、試験参加中に別の医療機関を受診する際に見せるためのカードだ。かかりつけ医や救急病院でこのカードを提示することで、「現在治験に参加しており、試験薬を服用している」という情報を他の医師に伝えることができる。治験薬と他の薬の相互作用を防ぐための仕組みだ。
相談が強く推奨されるケース
次のいずれかに当てはまる人は、治験施設のスクリーニングを受ける前に、かかりつけ医に一度相談しておくことを強く勧める。
ケース①:現在何らかの薬を服用している
処方薬・市販薬・漢方薬・サプリメントを問わず、日常的に服用しているものがある場合は相談が必要だ。理由は薬物の相互作用(Drug-Drug Interaction)にある。
例えば、血液をさらさらにするワーファリンを服用している人が、一部の試験薬を併用すると出血リスクが高まることがある。また、精神科で処方されている薬の中には、他の試験薬のCYP酵素(肝臓の代謝酵素)に影響を与え、試験薬の血中濃度を予期せず変動させるものがある。
「この薬を服用しながら試験に参加していいか」は、治験担当医師が判断するが、かかりつけ医に「治験に参加したいが、今の薬との組み合わせはどうか」と相談しておくと、スクリーニング時に説明しやすくなる。
ケース②:高血圧・糖尿病・甲状腺疾患などの慢性疾患がある
持病の種類と、試験の対象(健常者か患者か)によって参加可否が変わる。
- 健常者向け試験(第I相):高血圧・糖尿病があると基本的に除外される
- 患者向け試験(第II/III相):その疾患を対象にした試験であれば参加できる
- 軽度のコントロール良好な高血圧・糖尿病:試験によっては参加可能なことも
「自分の病気を対象にした試験があるかもしれない」と知ったら、まずかかりつけ医に「こういう試験があるが、私の状態で参加できそうか」と相談するのが一番スムーズだ。病状が安定しているかどうかの評価も、かかりつけ医が一番よく分かっている。
ケース③:過去に重篤な副作用やアレルギー反応を経験した
薬剤アレルギー(特にアナフィラキシー)の既往がある人は、治験担当医師に必ず伝える必要がある。花粉症・ハウスダストアレルギーの場合は多くの試験で除外にはならないが、食物や薬剤へのアレルギー反応が重篤な場合は除外基準に該当することが多い。
相談が不要なケース
20〜40代で特定の持病がなく、常用薬もない健康な人なら、治験施設のスクリーニングを直接受けに行くだけで問題ない。治験施設には医師が常駐しており、スクリーニング時の問診・診察でまとめて確認してくれる。
「病院嫌いで健康診断も受けていない」という人の場合、スクリーニングで初めて血液検査を受けることになるが、それ自体は問題ない。むしろ無料で健康状態を把握できる機会として捉えてよい。
かかりつけ医に相談する際の確認事項チェックリスト
実際にかかりつけ医に相談するとき、どんなことを伝え・何を確認すればよいのかをまとめた。
かかりつけ医に伝えること
- 参加を検討している治験の概要(試験薬の種類・試験期間・来院回数)
- 説明文書(インフォームドコンセント書類)のコピー(可能なら持参)
- 現在服用中の薬の全リスト(お薬手帳を持参)
- 治験期間中に薬の変更や受診が必要になる可能性があることの共有
かかりつけ医に確認すること
- ☐ 現在の薬を服用したまま試験に参加しても問題ないか
- ☐ 試験期間中に服薬内容を変更する必要が生じた場合、治験担当医に連絡してもよいか
- ☐ 持病の現在の状態が、試験参加に適した安定期にあるか
- ☐ 試験に伴う採血・処置が持病に悪影響を与えないか
- ☐ 試験期間中に急性増悪した場合の対応窓口(治験施設かかかりつけ医か)
申告漏れのリスクを知っておく
「バレなければいい」という発想で服用薬や持病を隠したまま参加するリスクは、参加者本人が一番大きく被る。
血液検査で薬剤の代謝物が検出された場合、申告していない薬の服用が発覚する。また、試験薬との相互作用で予期しない副作用が起きた場合、「申告漏れがあった」として試験中止になり、謝礼の支払いが見直されることもある。さらに、その施設での将来の参加資格を失う可能性もある。
治験はルールを守った上で参加することで、安全も謝礼も保障される仕組みだ。正直な申告が最も自分を守る行動だと理解しておいてほしい。
まとめ:「相談すべきか」の判断基準
かかりつけ医への事前相談は、持病・服用薬がある人には強く推奨されるが、健康な人には必ずしも必要ではない。どちらの場合も、治験施設のスクリーニングで担当医師が健康状態を確認するため、正直な申告が最前提だ。
相談するかどうか迷っているなら、「自分の体に何かしらの気になることがある」と思うなら相談しておくのが正解だ。治験担当医師は被験者の安全を守る義務を持っている。しっかり確認した上で参加を決める方が、その後の試験期間を安心して過ごせる。モニコムでは案件ごとに参加条件を詳しく掲載しているので、自分の状況に合った試験を探してみてほしい。
