「アトピーがあるけど、治験に参加できるんだろうか」「ニキビで悩んでいるから、塗り薬の試験に応募してみたい」――皮膚科系の治験に興味を持ちながら、参加条件が分からなくて足踏みしている人は少なくない。健常者向けの試験と違い、特定の疾患を持っていることが「条件」になるのが皮膚科系治験の特徴だ。
この記事では、アトピー性皮膚炎とニキビ(尋常性痤瘡)を対象とした皮膚科系治験について、参加条件・除外基準・試験中の制限・注意点を詳しく解説する。応募前に読んでおけば、スクリーニングで弾かれるリスクをかなり減らせるはずだ。
皮膚科系治験は「症状を持つ人」が参加対象
一般的な健常者向けの治験では「病気がないこと」が条件だが、皮膚科系治験はその逆だ。アトピー性皮膚炎やニキビといった疾患を一定程度以上持っていることが参加の前提になる。
アトピー性皮膚炎治験の重症度スコア
アトピー治験では、参加資格を判断するために「重症度スコア」が必ず評価される。代表的なものが以下の二つだ。
まず「EASIスコア(Eczema Area and Severity Index)」。全身を頭頸部・体幹・上肢・下肢の4領域に分け、皮疹の面積と症状の強さ(紅斑・浮腫・浸出液・皮膚の肥厚・掻破痕・苔癬化)をそれぞれ評価し、72点満点で算出する。スコアの目安は次の通りだ。
- 0.1〜1.0点:ほぼ寛解
- 1.1〜7.0点:軽症
- 7.1〜21.0点:中等症
- 21.1〜50.0点:重症
- 50.1〜72.0点:最重症
もう一つが「IGA(Investigator Global Assessment)スコア」。医師が皮膚の状態を0〜4の5段階で総合評価するもので、多くの治験でIGA3以上(中等症)が参加条件になっている。EASIでいうと概ね7点以上が目安だ。
つまり、「たまに乾燥して痒くなる程度」では対象外になることが多い。ある程度症状が続いている、または既存治療で改善しきれていない状態であることが求められる。
ニキビ治験の評価スケール
ニキビ(尋常性痤瘡)治験では、炎症性皮疹(赤いニキビ・膿疱)と非炎症性皮疹(白頭・黒頭)の数を数え、IGA(ニキビ版)で0〜4点評価が行われる。多くの試験で中等症(IGA3)以上の顔面ニキビが参加条件だ。
「ニキビが多くて悩んでいる」という人には参加しやすいが、1〜2個あるだけでは対象外になる。反対に、非常に重症で膿がひどい状態では別の除外基準に引っかかる場合もある。スクリーニングで医師が実際に確認するため、「ちょうどよい重症度」の時期に応募するのが現実的だ。
参加できない可能性が高い「除外基準」を把握しておく
皮膚科系治験には、いくつかの重要な除外基準がある。事前に把握しておかないと、スクリーニング当日に「参加できません」と言われる羽目になる。
ウォッシュアウト期間が必要な薬・治療
皮膚科系治験で最もよく問題になるのが「ウォッシュアウト(休薬)期間」だ。試験薬の効果を正確に評価するため、参加前に一定期間、現在使っている薬をやめる必要がある。
- 外用ステロイド(塗り薬):一般的に参加2〜4週間前から使用停止
- 全身性ステロイド(内服・注射):4週間以上前から停止が必要なことが多い
- 免疫抑制剤(シクロスポリンなど):4週間〜3ヶ月前から停止
- 生物学的製剤(デュピルマブ等):5半減期分の休薬が必要な場合
- 光線療法(PUVA・UVB):4週間前から停止
- 外用抗菌薬(ニキビ治験の場合):2〜4週間前から停止
「ウォッシュアウト期間中は治療ができない」という点を、参加前に十分に理解しておく必要がある。アトピーが悪化した場合に対応できる準備(かゆみを抑える保湿剤の継続使用は可能な場合が多い)についても、担当医に確認しておこう。
妊娠・授乳中は基本的に参加不可
外用薬(塗り薬)の試験であっても、妊娠中・授乳中・妊娠の可能性がある女性は多くの治験で除外対象となる。外用薬は経皮吸収量が少ないとはいえ、胎児や乳児への影響が完全には否定できないため、安全上の理由から除外するのが一般的だ。
また、試験期間中は確実な避妊が求められることが多い。ピル(経口避妊薬)を使用している場合は、ニキビ治験では除外基準になる場合もあるため、事前に確認が必要だ。
その他の代表的な除外基準
- 試験対象疾患以外の活動性皮膚疾患(乾癬・蕁麻疹など)がある
- 免疫系に影響を与える疾患(HIV感染・自己免疫疾患など)がある
- B型またはC型肝炎の活動性感染がある
- 過去に試験薬・類似成分でアレルギー反応が起きた
- 直近3〜6ヶ月以内に他の治験に参加した(ウォッシュアウト期間の重複)
- 試験部位に皮膚感染症(とびひ・ヘルペスなど)がある
皮膚科系治験の試験中に課される「日常生活の制限」
参加が決まっても、試験期間中はいくつかの行動制限がかかる。これを知らないまま参加すると、意図せずプロトコル違反(ルール違反)になりかねない。
スキンケア・化粧品の制限
皮膚科系治験の大きな特徴は、日常使いのスキンケア製品に制限がかかることだ。試験薬の効果を正確に評価するため、試験部位への市販保湿剤・クリーム・化粧水の使用が禁止される場合がある。施設から指定の保湿剤が提供され、それだけを使うよう指示されることもある。
- 指定保湿剤以外の外用薬・スキンケア使用禁止(試験部位)
- 試験部位のメイクアップ禁止(顔のニキビ試験の場合)
- 新たな市販ニキビ治療薬の購入・使用禁止
- スクラブ洗顔・ピーリング製品の使用禁止
紫外線・運動・食事の注意
試験部位への日焼けは、皮膚の状態を変化させて評価結果を狂わせるため、試験期間中は日焼け禁止が徹底される。夏の海水浴や屋外での長時間スポーツが禁止になることがある。
- 試験部位への直射日光・日焼けマシン使用禁止
- プール・海水浴の禁止(試験部位が濡れる・塩素にさらされる)
- 激しい発汗を伴う運動の制限(試験薬が流れる可能性)
- 食事制限はほとんどないが、グレープフルーツは避けること(一部の内服薬試験)
正直なところ、夏場に試験参加が重なると海に行けないのは若干のストレスになる。参加期間と自分のライフスタイルが合うかどうか、応募前に確認しておくのが賢明だ。
通院頻度と試験期間の目安
皮膚科系治験の多くは通院型だ。入院が必要なケースは少なく、定期的に施設に出向いて医師の評価・写真撮影・試験薬の受け渡しを受けるスタイルが一般的だ。
- 通院頻度:週1〜2回(試験初期)→ 月1〜2回(安定期)
- 試験期間:短いもので4〜8週間、長いもので24〜52週間
- 各回の滞在時間:30分〜2時間程度(採血・写真・問診)
試験期間が長いほど謝礼の総額は大きくなるが、その分ライフスタイルへの制約も続く。仕事や学業との両立を考えてから応募することをすすめる。
参加するメリットと「新薬試験に加わる」意義
アトピーやニキビの治験参加には、謝礼を得ながら専門医の診察を受けられるというメリットがある。試験期間中は定期的に皮膚科専門医が状態を評価し、副作用が起きた場合は速やかに対応が受けられる。市販のケアでは届かない最新の治療薬を試す機会でもある。
謝礼の相場
皮膚科系治験の謝礼は、試験の種類・期間・通院回数によって大きく異なる。外用薬の短期試験(4〜8週間、通院4〜8回)であれば、1回あたり5,000〜15,000円程度の交通費・謝礼が支払われ、総額で2万〜10万円になることが多い。生物学的製剤や新しい内服薬の長期試験(52週間)では、総額が数十万円に上るケースもある。
謝礼の受け取り方は施設により異なり、通院ごとに現金支払い、または試験終了後に一括振込の形が多い。
プラセボ群(偽薬群)のリスクを理解する
多くの治験では、試験薬を投与されるグループとプラセボ(有効成分なし)を投与されるグループに無作為に割り付けられる。自分がどちらのグループになるかは教えてもらえない(二重盲検試験)。つまり、試験期間中に症状が改善しない可能性も十分ある。
症状が悪化した場合は、担当医に相談の上で参加を中止できる。アトピーやニキビは生活の質に直結する疾患のため、「悪化したまま我慢しなければならない」ということはない。早めに相談することが重要だ。
応募前に確認しておくべき5つのポイント
皮膚科系治験への応募を検討しているなら、問い合わせ・エントリー前に以下を確認しておこう。
チェックリスト:応募前に自分で確認する
- ☐ 現在服用・使用中の皮膚治療薬・サプリをリストアップしてある
- ☐ ウォッシュアウト期間中に現在の治療を中断できる状態か確認した
- ☐ 妊娠・授乳の予定がない、または予定を確認した
- ☐ 試験期間中の通院スケジュールが仕事・学業と両立できる
- ☐ 試験期間中の日焼け・化粧品制限に対応できる
- ☐ 直近3〜6ヶ月以内に他の治験に参加していない
かかりつけ医への相談も忘れずに
現在アトピーやニキビで皮膚科にかかっている人は、治験参加を検討していることをかかりつけの医師に伝えておくのが望ましい。治験の担当医とかかりつけ医の間で情報が共有されないと、薬の変更や処方の混乱が起きる可能性がある。
ただし、かかりつけ医から「治験に参加すべきでない」と言われることはほぼない。治験への参加は患者の権利であり、担当医が関与することはGCPでも明確に定められている。「参加したい」という意思を伝えた上で、ウォッシュアウト期間中の対応策を相談するのがベストだ。
まとめ:皮膚科系治験は「症状がある人」にとってメリットが大きい
アトピー性皮膚炎やニキビを持っていることが「参加資格」になる皮膚科系治験は、専門医の診察を受けながら謝礼を得られる点で、悩みを抱える人にとって魅力的な選択肢だ。一方で、ウォッシュアウト期間・スキンケア制限・日焼け禁止といった生活上の制約も伴う。
参加前に確認すべき除外基準を把握し、現在の治療状況を整理した上で応募する。それだけでスクリーニングを通過できる可能性がぐっと上がる。まずはモニコムの皮膚科系案件一覧から、自分の症状・状況に合った試験を探してみてほしい。
